女性に多いバセドウ病
バセドウ病は、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる「甲状腺機能亢進症」の1つです。
発症の男女比は「男性1:女性5~6」と、比較的女性に多く見られる病気です。
眼球突出がよく知られている症状かと思われますが、その他にも動悸や多汗、手の震え、体重減少、イライラなど、日常生活での心と身体の状態に支障をきたすさまざまな症状を引き起こします。治療せずに放置していると、重症化するケースも見られます。
バセドウ病の原因は?
バセドウ病は、本来は外敵から自身の身体を守ってくれるはずの免疫が自己抗体を作り、自分自身を攻撃する「自己免疫疾患」の1つに分類されます。
自己抗体が作られてしまう根本的な原因は、残念ながら未だはっきりと分かっていません。
バセドウ病の症状
代表的な症状として、
- 甲状腺腫(甲状腺の腫れ)
- 眼球突出
- 頻脈
が挙げられます。ただこれらの症状が必ず現れるというわけではありません。その他、以下のような症状も見られます。
- 動悸
- 多汗、暑がり
- 下痢
- 食べても太らない、体重減少
- イライラする、心が落ち着かない
- 月経不順
- 手の震え
- すぐに疲れる
- 不妊症
バセドウ病の診断・検査
問診、血液検査、心電図検査、甲状腺超音波検査の結果をもとに総合的に診断します。
バセドウ病の治療
甲状腺ホルモンを抑える薬を使った薬物療法、放射線ヨードを用いるアイソトープ療法、手術療法などの方法があります。
薬物療法
お薬の内服による治療です。治療そのもののご負担は少ないものの、長期にわたって服用し続ける必要があります。内服開始直後から多めに服用し、その後症状のコントロールが確認できるようでしたら、薬を減量していくことができます。
主に、軽症の方、甲状腺の腫れが少ない方、妊娠されている方が適応となります。
アイソトープ治療
放射線ヨードのカプセルを内服する治療です。
放射線によって甲状腺の細胞を破壊し、甲状腺ホルモンの分泌量を抑えます。放射線ヨードは服用後、甲状腺・腫瘍・がんなどの特定の組織に集中するため、“放射線”というワードから連想されるがんや白血病などを誘発することはありません。また実験によってもそのことが立証されています。
薬物療法よりも短期間での治療が可能ですが、将来的に甲状腺機能低下症になるケースもあるため、治療終了後も定期的に通院・検査をしていただく必要があります。
主に、薬物療法で一定の効果が得られなかったあるいは副作用が強く現れた方、心臓や肝臓の疾患がある方、短期間で治療を終わらせたい方が適応となります。
なお、妊娠中の方または妊娠の可能性がある方、授乳中の方はこの治療を受けることができません。
手術療法
甲状腺を一部残し、手術により切除する方法です。
手術後に薬物療法が必要になることもありますが、その割合は約20%で、多くのケースでは薬物療法なしでお過ごしいただけます。ただ、喉に小さな傷(ほとんど目立たないくらい)が残ります。
主に、甲状腺の腫れがひどい方、薬物療法で一定の効果が得られなかったあるいは副作用が強く現れた方、短期間で治療を終わらせたい方が適応となります。
各治療のメリット・デメリット
※スクロールで全体を表示します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
薬物療法 | ・多くの医療機関で受けられる ・内服のみで日常生活への影響が少ない ・将来的な甲状腺機能低下症のリスクがない |
・治療期間が長期にわたる ・副作用のリスクがある ・効果の個人差が大きい ・内服を終えた後に再発することがある |
アイソトープ治療 | ・1回のみの内服で日常生活への影響が少ない ・治療成功後の再発がない ・副作用のリスクがない ・甲状腺の腫れがなくなる |
・対応できる医療機関が少ない ・治療後の食事制限がある ・将来的な甲状腺機能低下症のリスクがある ・眼の症状が悪化することがある ・重症の場合には入院が必要 |
手術療法 | ・効果をもっとも早く確実に得られる ・甲状腺の腫れがなくなる |
・対応できる医療機関が少ない ・再発のリスクがある ・将来的な甲状腺機能低下症のリスクがある ・喉元に小さな傷が残る ・合併症のリスクがある |
日常生活で気を付けること・食事など
よく患者様から「やってはいけないことってありますか?」と質問をいただくので、日常生活で気を付けることをこちらに掲載をさせていただきます。
日常生活
甲状腺機能の亢進状態にあるあいだは、頻脈・不整脈が起こりやすくなります。心臓に負担がかかっている状態ですので、できるだけ安静にしてください。
また、睡眠不足、ストレスは、症状を悪化させる原因になります。
食事
特に制限はありません。
ただし、昆布などの海藻類といったヨウ素を含む食品の大量摂取、お酒の飲み過ぎは控えてください。
仕事
甲状腺機能の亢進状態にあるあいだは、心身への負担を避けることが望まれます。心身が疲れ切ってしまう仕事、長時間勤務はできる限り避けてください。また、適度に休憩をとりましょう。
内服(薬物療法を開始した方)
処方されたお薬は、必ず指示通りに飲んでください。内服を忘れてしまうと、症状が急に強く現れることがあります。
また、高熱、喉の痛みなどの副作用が現れた場合には、すぐにご連絡ください。
運動
激しい運動は控えてください。
治療による甲状腺機能の回復とともに少しずつ運動を再開し、将来的にはまったく制限なく運動ができることを目指します。
喫煙
喫煙をされる方は、眼の症状が悪化しやすく、またお薬の作用が弱まってしまうと言われています。
禁煙されることをおすすめします。